アンバサダーマーケティングの定義
アンバサダーマーケティングとは何か
アンバサダーマーケティングとは、ブランドの熱心なファンを「大使」として任命し、口コミ活動を促すマーケティング手法です。
アンバサダーは単なる広告塔ではありません。ブランドの価値観を深く理解し、自発的に発信・推薦してくれる存在です。
企業がアンバサダーを公式に認定します。特典や情報を提供する代わりに、アンバサダーは自分の言葉でブランドの魅力を発信します。
インフルエンサーマーケティングとの違い
アンバサダーとインフルエンサーは、しばしば混同されます。しかし重視するポイントが異なります。
インフルエンサーマーケティングはフォロワー数とリーチを重視します。ブランドとの関係は短期的な契約が多いです。報酬は1投稿あたりの報酬が一般的です。発信内容は企業から依頼された内容です。複数ブランドのPRを同時に行うことが多いです。
アンバサダーマーケティングは熱量とブランド愛を重視します。ブランドとの関係は長期的なパートナーシップです。報酬は製品提供、特典、体験、ポイントなど多様です。発信内容は自分の言葉で自発的に発信します。通常は1ブランドとの関係を深めます。
簡単にまとめると、インフルエンサーは「リーチの広さ」で選ばれます。アンバサダーは「愛の深さ」で選ばれます。
なぜ今アンバサダーマーケティングが注目されるのか
アンバサダーマーケティングが注目される理由は、消費者の購買行動が変化しているからです。
広告への不信感が高まっています。消費者の広告への信頼度は低下しています。「知人のおすすめ」への信頼が高まっています。Nielsen社の調査によると、消費者の92%が広告よりも知人の推薦を信頼するとされています。
インフルエンサーマーケティングの限界も見えてきました。フォロワー数が多いインフルエンサーでも、「PR感」が強いと購買につながりにくいです。消費者は広告を見分けるようになりました。
UGC(ユーザー生成コンテンツ)の価値が認識されています。一般ユーザーの自発的な投稿は、企業発信より信頼されやすいです。アンバサダーはUGCを継続的に生み出してくれる存在です。
アンバサダーマーケティングの成功事例
ネスカフェアンバサダー
ネスカフェアンバサダーは、日本のアンバサダーマーケティングの代表的成功事例です。
施策内容は以下でした。オフィスにコーヒーマシンを無料で設置する制度を2012年に開始しました。アンバサダーはマシンの管理とコーヒーの補充を行います。オフィスでネスカフェを広める役割を担います。
成果として、2019年時点で登録アンバサダー数は約40万人を達成しました。
成功要因は3つでした。「コーヒーマシン無料」という明確なメリット。「オフィスのコーヒー担当」という役割の明確化。口コミによる自然な拡大構造。
lululemon(ルルレモン)
lululemonはフィットネスインストラクターをアンバサダーとして起用しています。
施策内容は以下でした。ヨガやフィットネスのインストラクターを「ブランドアンバサダー」として認定。製品提供、店舗でのクラス開催権、イベント参加などの特典を提供。
成果として、アンバサダーがレッスンで着用することでブランドの認知が拡大しました。「本物のフィットネス愛好家が選ぶブランド」というイメージを確立しました。
成功要因は3つでした。ターゲット層に影響力を持つ人をアンバサダーに選定。実際に製品を使うシーンでの露出。長期的な関係構築。
レッドブル
レッドブルはアスリートやエクストリームスポーツ選手をアンバサダーとして起用しています。
施策内容は以下でした。エクストリームスポーツ選手、eスポーツプレイヤー、DJなどを「レッドブルアスリート」として長期契約。製品提供だけでなく、活動支援やイベント開催など包括的にサポート。
成果として、「挑戦する人を応援するブランド」というイメージを確立しました。若年層やアクティブ層から圧倒的な支持を得ています。
アンバサダーマーケティングのメリット・デメリット
メリット1:信頼性の高い口コミが得られる
アンバサダーは本当にブランドを愛している人です。発信に説得力があります。
「PRです」とわかる投稿より、「私が好きだから紹介したい」という自発的な投稿のほうが信頼されます。
メリット2:費用対効果が高い
インフルエンサーマーケティングと比較して、費用を抑えられることが多いです。
インフルエンサーへの報酬は1投稿数万円〜数百万円かかることがあります。アンバサダーへの報酬は製品提供や特典が中心です。金銭報酬は少額または無償のケースも多いです。
メリット3:長期的な関係を構築できる
アンバサダーとの関係は長期的なパートナーシップです。
単発のPR依頼と異なり、継続的にブランドを発信してもらえます。アンバサダーからのフィードバックを商品改善に活かすこともできます。
メリット4:UGCが継続的に生まれる
アンバサダーは自発的にコンテンツを作成・発信してくれます。
企業が制作するコンテンツより、アンバサダーが作るUGCのほうが親近感があります。エンゲージメントも高い傾向があります。
デメリット1:即効性がない
アンバサダーマーケティングは長期施策です。
インフルエンサーに依頼すれば翌日に投稿してもらえます。しかしアンバサダーの育成と関係構築には時間がかかります。短期的な認知拡大には不向きです。
デメリット2:コントロールが難しい
アンバサダーの発信内容は企業がコントロールしにくいです。
自発的な発信が魅力である反面、ブランドイメージと異なる投稿をされるリスクもあります。ガイドラインの策定が重要です。
デメリット3:管理工数がかかる
アンバサダーの人数が増えると、管理とコミュニケーションの工数が増えます。
特典の発送、情報共有、イベント運営などの運用負荷を考慮する必要があります。
アンバサダーマーケティングの始め方
ステップ1:アンバサダー像を定義する
どんな人にアンバサダーになってほしいかを明確にします。
定義すべき項目は4つあります。ブランドへの愛着度(すでに購入・利用している、SNSで言及している)。発信力(フォロワー数は問わないが、定期的に発信している)。ターゲット層との親和性(狙いたい顧客層に近い属性)。価値観の一致(ブランドの理念に共感している)。
ステップ2:アンバサダーを募集・選定する
アンバサダー候補を見つけ、選定します。
募集方法は4つあります。公式サイトやSNSでの公募。既存顧客データからの抽出。SNSでブランドに言及しているユーザーのスカウト。紹介プログラム経由の優良顧客。
選定基準は4つあります。ブランド愛の深さ(発言内容、購入履歴)。発信の質(投稿のクオリティ、頻度)。エンゲージメント(フォロワーからの反応)。コミュニケーション能力(返信、対話の姿勢)。
ステップ3:アンバサダープログラムを設計する
アンバサダーへの特典と期待する活動を設計します。
特典の例は5つあります。製品の無料提供や先行提供。限定イベントへの招待。アンバサダー限定コミュニティへの参加。公式サイトやSNSでの紹介。報酬、ポイント、コミッション。
期待する活動は4つあります。SNSでの定期的な発信(月X回以上)。レビューや口コミの投稿。イベントへの参加とレポート。商品へのフィードバック。
ステップ4:アンバサダーとの関係を構築する
アンバサダーを「広告塔」ではなく「パートナー」として扱います。
関係構築のポイントは4つあります。定期的なコミュニケーション(メール、限定チャット)。新商品や新サービスの先行情報共有。アンバサダーの意見やフィードバックを尊重。表彰や感謝の表明(「今月のベストアンバサダー」など)。
ステップ5:効果測定と改善
アンバサダーマーケティングの効果を測定し、継続的に改善します。
測定すべき指標は4つあります。アンバサダー経由の売上や登録数。アンバサダーの投稿数とエンゲージメント。ブランドへの言及数(SNS上のメンション)。アンバサダーの継続率と満足度。
クリエイターがファンをアンバサダーにする方法
クリエイターにとってのアンバサダー
クリエイターにとってのアンバサダーは「積極的に自分を広めてくれる熱心なファン」です。
企業のアンバサダーマーケティングと同様の考え方が適用できます。ファンの中から「アンバサダー」を認定し、紹介活動を促進できます。
ファンアンバサダー制度の設計例
クリエイターがファンアンバサダー制度を設計する例を紹介します。
アンバサダーの条件は3つ設定します。過去に3人以上を紹介した実績があること。SNSでクリエイターを定期的に紹介していること。ファンクラブやメンバーシップに加入していること。
アンバサダーへの特典は6つ用意します。「公式アンバサダー」の称号とバッジ。限定コンテンツへのアクセス。新作の先行視聴権。配信での名前読み上げや特別な扱い。オフラインイベントへの優先招待。紹介報酬(紹介1人につきポイント付与)。
アンバサダーに期待する活動は3つです。月1回以上のSNS投稿。新規ファンへの案内やサポート。ファンコミュニティでの活発な参加。
紹介プログラムとの連携
紹介プログラムとアンバサダー制度を連携させると効果的です。
連携の例は3つあります。一定数の紹介を達成したファンを自動的にアンバサダー認定する。アンバサダーには通常より高い紹介報酬を設定する。アンバサダー限定の紹介キャンペーンを実施する。
紹介プログラムは「仕組み」です。アンバサダー制度は「称号とコミュニティ」です。両方を組み合わせて相乗効果を狙いましょう。
クリエイターのアンバサダー成功事例
あるVTuberのファンアンバサダー制度の事例を紹介します。
施策内容は以下でした。紹介数上位10%のファンを「公式応援団」として認定。限定バッジ、専用Discordチャンネル、月1回のQ&A配信参加権を付与。
成果は3つでした。応援団メンバーの紹介数が通常ファンの5倍に増加。応援団メンバーの解約率は通常ファンの半分以下。応援団がファンコミュニティの盛り上げ役として機能。
成功要因は3つでした。「公式に認められた」という承認欲求の充足。特別なコミュニティへの帰属意識。紹介活動へのモチベーション向上。
アンバサダーマーケティングの注意点
ステマ規制への対応
2023年10月、消費者庁による「ステルスマーケティング規制」が施行されました。
アンバサダーが製品や報酬を受け取って投稿する場合、「PR」「広告」「提供」などの表示が必要です。表示なしで投稿させると、景品表示法違反となる可能性があります。
アンバサダーに対してガイドラインを明確に伝えましょう。
アンバサダーの質を担保する
数を増やすことより、質を担保することが重要です。
ブランドイメージにそぐわないアンバサダーを認定すると、逆効果になることがあります。選定基準を明確にし、慎重に判断しましょう。
長期的な視点で取り組む
アンバサダーマーケティングは短期施策ではありません。
効果が出るまでに時間がかかることを理解しましょう。最低でも6ヶ月〜1年のスパンで計画を立てることをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q. アンバサダーとインフルエンサーの違いは何ですか?
重視するポイントが異なります。
インフルエンサーは「フォロワー数とリーチ」を重視します。アンバサダーは「熱量とブランド愛」を重視します。インフルエンサーは単発依頼が多いです。アンバサダーは長期的なパートナーシップが基本です。
Q. アンバサダーにはどのくらいの報酬が必要ですか?
必ずしも高額な金銭報酬は必要ありません。
アンバサダーは元々ブランドが好きな人です。製品提供、限定特典、イベント招待などの「体験価値」が喜ばれることが多いです。紹介プログラムと連携して成果報酬型にする方法もあります。
Q. 小規模なクリエイターでもアンバサダー制度は導入できますか?
はい、むしろ小規模のうちから導入することをおすすめします。
少数でも熱心なファンがいれば、彼らをアンバサダーとして認定できます。紹介を促進できます。スケールしてから導入するより、早い段階で仕組みを作っておくほうが効果的です。
Q. アンバサダーマーケティングとリファラルマーケティングの違いは?
アンバサダーマーケティングは、リファラルマーケティングの一形態です。
リファラルマーケティングは「紹介を活用するマーケティング全般」を指します。アンバサダーマーケティングは「特にブランド愛の高いファンを活用する手法」を指します。
Q. アンバサダーの人数はどのくらいが適切ですか?
規模と運用リソースによります。
最初は10〜50人程度から始めましょう。徐々に拡大するのがおすすめです。人数が多すぎると管理が難しくなります。特典の自動化やコミュニティ運営の仕組みを整えてからスケールしましょう。
まとめ
アンバサダーマーケティングとは、熱心なファンを「大使」として口コミ活動を促す手法です。
インフルエンサーとの違いは2つあります。「フォロワー数」より「熱量」を重視すること。長期的なパートナーシップを築くこと。
始め方の5ステップがあります。アンバサダー像を定義する。アンバサダーを募集・選定する。アンバサダープログラムを設計する。アンバサダーとの関係を構築する。効果測定と改善を行う。
クリエイターも熱心なファンをアンバサダーとして認定できます。紹介活動を促進できます。紹介プログラムと連携させることで、ファンの力でファンを増やす仕組みを作りましょう。