アドボカシーマーケティングとは、顧客を「推奨者」に変え、自発的な口コミでサービスを広めてもらうマーケティング手法です。
アドボカシー(Advocacy)は「支持」「推奨」という意味の英語です。顧客やファンが自発的に「この商品、本当におすすめ!」と周囲に勧める状態を意図的に作り出すのがアドボカシーマーケティングです。
広告より信頼される「第三者からの推薦」を活用するこの手法は、特にクリエイターやファンビジネスに効果的です。
本記事では、アドボカシーマーケティングの意味からメリット、実践方法まで詳しく解説します。
この記事でわかること
アドボカシーマーケティングの定義と意味
アドボカシーとアドボケートの違い
アドボカシーマーケティングのメリット
類似マーケティング手法との違い
顧客をアドボケートに変える5つの方法
アドボカシーマーケティングとは?定義と意味
アドボカシー(Advocacy)の意味
Advocacy(アドボカシー)とは、英語で「支持」「擁護」「推奨」を意味する言葉です。
マーケティングの文脈では、「顧客が自発的に商品やサービスを他者に推奨する行為」を指します。
企業が広告で「うちの商品はいいですよ」と言うよりも、実際に使っている顧客が「この商品、本当におすすめ!」と言う方が信頼されます。この「顧客からの推奨」を意図的に促進するのがアドボカシーマーケティングです。
アドボカシーマーケティングの定義
アドボカシーマーケティングとは、顧客やファンを「推奨者(アドボケート)」に変え、自発的な口コミで商品やサービスを広めてもらうマーケティング手法です。
アドボカシーマーケティングの特徴は、顧客に「推奨してもらう」のではなく、顧客が「推奨したくなる」状態を作ることです。強制的な口コミではなく、自然発生的な口コミを促進します。
アドボケート(推奨者)とは
アドボケート(Advocate)とは、自発的に商品やサービスを他者に推奨してくれる顧客やファンのことです。
すべての顧客がアドボケートになるわけではありません。顧客のロイヤルティには階層があります。
一般顧客は、商品を購入したことがある人です。リピーターは、繰り返し購入する人です。ファンは、ブランドに愛着を持つ人です。アドボケートは、積極的に他者に推奨する人です。
アドボケートは顧客ピラミッドの頂点に位置し、人数は少ないですがビジネスへの貢献度は非常に高くなります。
NPS(ネットプロモータースコア)との関係
NPS(ネットプロモータースコア)は、顧客ロイヤルティを測る指標です。「このサービスを友人に勧める可能性」を0〜10点で聞きます。
9〜10点をつけた人が「推奨者(Promoter)」で、これがアドボケートに該当します。7〜8点は「中立者(Passive)」で、満足しているが積極的ではありません。0〜6点は「批判者(Detractor)」で、不満を持っている可能性があります。
NPSの計算式は「推奨者の割合 − 批判者の割合」です。NPSが高いほど、アドボケートが多い状態と言えます。
アドボカシーマーケティングが注目される背景
なぜ今、アドボカシーマーケティングが注目されているのでしょうか。
消費者の広告離れ
消費者の広告に対する信頼度は低下しています。
ニールセン社の調査によると、知人・友人からの推薦を信頼する人は92%に達します。一方、オンラインレビューを信頼する人は70%、企業の広告を信頼する人は33%にとどまります。
つまり、知人からの推薦は、広告の約3倍信頼されるのです。
SNS時代の口コミの力
SNSの普及により、一般消費者でも簡単に口コミを発信できるようになりました。
1人の熱狂的なファンが投稿した口コミが、何千人、何万人に届く可能性があります。この環境変化が、アドボカシーマーケティングの重要性を高めています。
コトラーの5Aモデル(マーケティング4.0)
マーケティングの大家フィリップ・コトラーは、著書『マーケティング4.0』で「5Aモデル」を提唱しました。
5Aモデルとは、Aware(認知)→ Appeal(訴求)→ Ask(調査)→ Act(行動)→ Advocate(推奨)という顧客の購買プロセスです。
従来のマーケティングでは「購入(Act)」がゴールでしたが、5Aモデルでは「推奨(Advocate)」が最終ゴールとして位置づけられています。
つまり、顧客に購入してもらうだけでなく、他者に勧めてもらうところまで設計するのが、現代のマーケティングでは重要とされています。
クリエイターエコノミーの台頭
クリエイターエコノミーの成長も、アドボカシーマーケティングの重要性を高めています。
クリエイターにとってアドボカシーが重要な理由は3つあります。
理由①:広告予算が限られるとして、個人クリエイターは大企業のような広告予算を持っていません。
理由②:ファンの熱量が高いとして、ファンは「推しを広めたい」という強い動機を持っています。
理由③:信頼関係がベースとして、クリエイターとファンの関係は、企業と顧客の関係より親密です。
ファンが自発的にSNSで推しを紹介する行動こそがアドボカシーであり、これを意図的に促進することで効率的にファンを増やせます。
アドボカシーマーケティングのメリット
アドボカシーマーケティングには、広告にはないメリットがあります。
メリット①:広告費の削減と高いROI
アドボケートによる口コミは、基本的に無料です。
広告で新規顧客を1人獲得するコスト(CPA)と、紹介で獲得するコストを比較すると、大きな差があります。リスティング広告のCPAが3,000〜10,000円、SNS広告が1,000〜5,000円なのに対し、紹介(アドボカシー)は0〜500円程度です。
紹介経由は、報酬を用意したとしても広告より大幅に低コストで、ROI(投資対効果)が非常に高くなります。
メリット②:LTV(顧客生涯価値)の向上
アドボケートは継続率が高く、LTVも高い傾向があります。
また、アドボケートが紹介した新規顧客も、LTVが高いというデータがあります。紹介経由の顧客は、LTVが平均16%高いという調査結果があります(Harvard Business Review)。紹介経由の顧客は、解約率が18%低いという調査結果もあります(Wharton School)。
これは、紹介経由の顧客が「最初から好意的」であり、サービスとの相性も良いためと考えられます。
メリット③:ブランドの信頼性向上
第三者からの推奨は、自社発信の情報より信頼されます。
企業が「うちの商品は素晴らしいです!」と言っても、「まあ、そう言うよね...」と思われがちです。一方、アドボケートが「この商品、本当に良かった!」と言えば、「へえ、試してみようかな」となります。
クリエイターの場合も同様です。本人が「チャンネル登録してね」と言うより、ファンが「この人の動画、マジで面白いから見て!」と言う方が効果的です。
メリット④:質の高い新規顧客の獲得
アドボケートは、自分と似た価値観や興味を持つ人に紹介する傾向があります。
そのため、紹介経由の新規顧客は、サービスとの相性が良いことが多いです。「紹介で来たファンは、最初から熱量が高い」という現象は、この相性の良さが理由です。
メリット⑤:持続的な成長基盤の構築
アドボカシーマーケティングがうまく機能すると、「顧客が顧客を呼ぶ」循環が生まれます。
この循環がどれだけ回っているかを示す指標がバイラル係数(K-factor)です。バイラル係数が1.0を超えると、広告を止めてもユーザーが増え続ける状態になります。
類似マーケティング手法との違い
アドボカシーマーケティングと、似たような手法の違いを整理しましょう。
インフルエンサーマーケティングとの違い
アドボカシーマーケティングの発信者は既存顧客・ファンで、報酬は原則なしまたは少額です。動機は本心からの推奨で、信頼性は高く、コストは低く、効果は継続的です。
インフルエンサーマーケティングの発信者はインフルエンサー(外部の有名人)で、報酬は高額(案件)です。動機は報酬目的で、信頼性は中程度(PRとわかると低下)、コストは高く、効果は一時的(キャンペーン期間のみ)です。
インフルエンサーマーケティングは「外部の有名人に宣伝してもらう」のに対し、アドボカシーマーケティングは「既存のファンに広めてもらう」という違いがあります。
リファラルマーケティングとの違い
アドボカシーマーケティングの定義は顧客が自発的に推奨する状態を作ることで、焦点は顧客の「姿勢・状態」です。報酬は原則なしで、範囲は広い(口コミ全般)です。
リファラルマーケティングの定義は紹介による顧客獲得の仕組みで、焦点は「仕組み・プログラム」です。報酬はあり(紹介報酬)で、範囲は狭い(紹介プログラム)です。
アドボカシーマーケティングは「考え方・状態」であり、リファラルマーケティングは「仕組み・手法」という関係です。アドボケート(推奨者)の行動をリファラルプログラムで仕組み化する、という形で併用されることが多いです。
ファンマーケティング・コミュニティマーケティングとの違い
アドボカシーマーケティングの焦点は推奨行動で、目的は口コミ拡大、主な活動は紹介促進です。
ファンマーケティングの焦点はファンとの関係構築で、目的はLTV向上、主な活動は限定コンテンツ提供です。
コミュニティマーケティングの焦点はコミュニティ形成で、目的は帰属意識の醸成、主な活動は交流の場づくりです。
これらは排他的ではなく、相互に関連し合う概念です。ファンマーケティングでファンとの関係を深め、コミュニティマーケティングでファン同士のつながりを作り、その結果としてアドボカシー(推奨行動)が自然と生まれます。
顧客をアドボケートに変える5つの方法
顧客やファンをアドボケートに育てるための具体的な方法を解説します。
方法①:顧客との関係性を深める
アドボケートは、強い関係性の上に生まれます。まず、顧客との関係を深めることが第一歩です。
具体的な施策として、コメント・DMへの返信やQ&A配信などの双方向コミュニケーション、「いつも応援ありがとう」を言葉にする感謝を伝える行動、常連ファンの名前やIDを覚えて呼びかける名前を覚える取り組み、リクエストを反映したり感想を引用したりする顧客の声を取り入れる姿勢があります。
「自分のことを見てくれている」という実感が、アドボケートへの第一歩です。
方法②:シェアしたくなる体験を提供する
「誰かに話したくなる」体験を意図的に設計しましょう。
具体的な施策として、「メンバー限定の裏話」などシェアしたくなる情報である限定コンテンツ、予告なしの特別配信やファンへの個別メッセージなどのサプライズ、「1周年記念バッジ」などシェアしやすい形で提供する達成の可視化、ファンと一緒に作るコンテンツや投票企画などの共創体験があります。
「思っていたより良かった」「期待を超えた」という驚きが、口コミを生み出します。
方法③:リファラルプログラムを導入する
アドボケートの「推奨したい」という気持ちを、リファラルプログラムで仕組み化しましょう。
具体的な施策として、ファン1人ひとりに専用コードを発行する紹介コードの発行、限定コンテンツや配信での名前読み上げなどの紹介報酬の設計、定期的にリファラルプログラムの存在をリマインドする紹介の告知があります。
リファラルプログラムがあることで、「推奨したい」という気持ちが「実際に紹介する」という行動につながりやすくなります。
方法④:コミュニティを構築する
ファン同士がつながる場を作ることで、アドボカシーが自然と生まれます。
具体的な施策として、ファン同士が交流できる場を提供するDiscordサーバー、ファン同士が会える機会を作るオフラインイベント、創作活動を公式に認め紹介するファンアート・二次創作の奨励、「おすすめのファンアカウント」を紹介するファン同士の紹介があります。
ファン同士のつながりが強いコミュニティは、自然と新規ファンを歓迎する文化が生まれ、アドボカシーが活性化します。
方法⑤:アドボケートを特別扱いする
積極的に推奨してくれる顧客(アドボケート)を、特別扱いしましょう。
具体的な施策として、トップ紹介者を可視化する紹介数ランキング、「応援団長」「アンバサダー」などの称号を付与する称号・バッジ、アドボケート限定のコンテンツや体験を提供する限定特典、DMや配信で名前を挙げて感謝を伝える直接の感謝、アドボケートとの共同企画を行うコラボ企画があります。
「特別扱いされている」という実感が、さらなるアドボカシーを促します。
アドボケートを見つける方法
アドボケート(推奨者)を特定するための方法を紹介します。
NPS(ネットプロモータースコア)の活用
「このサービス(クリエイター)を友人にどれくらい勧めたいですか?」を0〜10点で聞きます。
9〜10点をつけた人が「推奨者(Promoter)」で、アドボケート候補です。この層に集中的にアプローチしましょう。7〜8点は「中立者(Passive)」で、満足しているが積極的ではありません。0〜6点は「批判者(Detractor)」で、不満を持っている可能性があります。
行動データで特定する
行動データからアドボケートを特定する方法もあります。
紹介数が多い人、SNSシェア数が多く投稿を頻繁にシェアしている人、UGC投稿としてファンアートや感想を自発的に投稿している人、コメント頻度が高く配信や投稿に頻繁にコメントしている人、継続期間が長く長期間継続的に応援している人は、アドボケートの可能性が高いです。
アドボケート発見の5つのサイン
以下の特徴に当てはまる顧客は、アドボケートの可能性が高いです。
繰り返し購入・参加として、メンバーシップ継続やグッズ購入などの行動があります。SNSで自発的に推奨として、依頼していないのにおすすめ投稿をしています。フィードバックをくれるとして、建設的な意見や感想を伝えてくれます。コミュニティで活発として、Discordなどで他のファンを助けています。紹介実績があるとして、実際に友達を紹介しています。
アドボカシーマーケティングの成功事例
事例①:Zappos(驚きの顧客体験)
米国の靴のECサイトZapposは、「顧客サービスの会社がたまたま靴を売っている」という理念で知られます。
施策内容として、365日返品無料、カスタマーサポートに時間制限なし(10時間以上の通話記録も)、顧客の期待を超えるサプライズ配送などを実施しました。
成果として、これらの「驚きの顧客体験」がSNSでシェアされ、自然とアドボケートが増えていきました。
成功要因は、顧客体験を徹底的に重視したことです。
事例②:パタゴニア(価値観への共感)
アウトドアブランドのパタゴニアは、環境活動への真摯な取り組みがアドボカシーを生んでいます。
施策内容として、「Don't Buy This Jacket」(このジャケットを買わないで)という逆張り広告、売上の1%を環境保護に寄付、製品の修理サービスを積極的に提供などを実施しました。
成果として、ブランドの価値観に共感した顧客がアドボケートとして活動しています。
成功要因は、ブランドの価値観を明確にし、共感を生んだことです。
事例③:スノーピーク(熱狂的コミュニティ)
キャンプ用品ブランドのスノーピークは、「スノーピーカー」と呼ばれる熱狂的ファンがアドボケートとして活動しています。
施策内容として、社長自らがキャンプイベントに参加、ファン同士のコミュニティ「スノーピークウェイ」の運営、永久保証という安心感の提供などを実施しました。
成果として、熱狂的なファンコミュニティが形成され、自然な口コミが広がっています。
成功要因は、経営層が顧客と直接交流し、コミュニティを大切にしたことです。
事例④:VTuber(推しマーク活用)
あるVTuberは、ファンに「○○推し」のプロフィール画像フレームを配布しました。
施策内容として、推しマーク付きのプロフィール画像フレームを無料配布しました。
成果として、ファンがTwitterのアイコンをフレーム付きに変更し、自然と宣伝効果が生まれました。
成功要因は、ファンの「推しを表明したい」という欲求を満たすことがアドボカシーにつながったことです。
よくある質問(FAQ)
Q. アドボケートにはお金を払うべきですか?
A. 基本的には不要ですが、感謝の気持ちとして報酬を用意するのは有効です。ただし、金銭報酬よりも「限定コンテンツ」「体験」「認定」などの方がアドボケートには喜ばれることが多いです。
Q. アドボカシーの効果はどう測定すればいいですか?
A. 以下の指標で測定できます。NPS(ネットプロモータースコア)、紹介経由の新規獲得数、SNSでのメンション・シェア数、バイラル係数(K-factor)などが代表的な指標です。
Q. アドボカシーとロイヤルティの違いは?
A. ロイヤルティは「継続利用」、アドボカシーは「推奨行動」です。ロイヤルティが高くても、他者に推奨しない顧客もいます。アドボカシーは、ロイヤルティの「さらに上」の状態と言えます。
Q. 小規模なビジネスでも始められますか?
A. むしろ小規模なうちから始めるべきです。顧客が少ないうちは、1人ひとりとの関係を深めやすく、アドボケートを育てやすい環境にあります。
Q. アドボカシーとリファラルプログラムは併用すべきですか?
A. はい、併用がおすすめです。アドボカシーマーケティングで「推奨したい」という気持ちを育て、リファラルプログラムでその行動を「仕組み化」するのが効果的です。
Q. アドボケートが増えない場合、何から始めるべきですか?
A. まずは顧客満足度の向上から始めましょう。アドボカシーは顧客満足度の上に成り立ちます。「期待を超える体験」を提供し、「誰かに話したくなる」状態を作ることが第一歩です。
まとめ
アドボカシーマーケティングとは、顧客を「推奨者」に変え、自発的な口コミでサービスを広めてもらうマーケティング手法です。
アドボカシーマーケティングは、広告より信頼される「第三者からの推薦」を活用する手法です。コトラーの5Aモデルでも「推奨(Advocate)」が最終ゴールとして位置づけられています。
アドボカシーマーケティングのメリットは、広告費の削減と高いROI、LTV向上、ブランドの信頼性向上、質の高い新規顧客の獲得、持続的な成長基盤の構築です。
顧客をアドボケートに変える5つの方法は、顧客との関係性を深める、シェアしたくなる体験を提供する、リファラルプログラムを導入する、コミュニティを構築する、アドボケートを特別扱いする、です。
顧客を「最強の味方」に変えて、持続的な成長を実現しましょう。
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